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眞城知己(2023) 国連障害者権利委員会勧告(総括所見)と特別ニーズ教育・インクルーシブ教育研究の課題.日本特別ニーズ教育学会SNEジャーナル. 第29巻1号. pp.25-45

 国連障害者権利委員会が日本政府に対する総括所見で懸念を示したのは、通常学級以外の場のみで特別支援教育の拡大を図ることに終始し、通常学校・学級の役割と責任の拡大のための抜本的見直しに着手しなかったことが背景である。実は国連は特別学校や特別学級の「全廃」を求めたことはなく、それらを必要とする子どもが存在していることをサラマンカ宣言以降、現在に至るまで認めている。国連が求めているのは、通常学校における特別支援教育の拡大ではなく、インクルーシブ教育の考え方の本質を教育制度に位置づけた通常学校制度の改善・開発である。学術的にはインクルーシブ教育を暗黙背とすることなく可能性と限界を追究し、多様性を包含する学校制度の具体像を導く理論と学術的根拠を提供できるようにすることが求められる。 PDF File Download 
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眞城知己(2023) 通級による指導対象者数変化の数理モデル-発達障害のある児童生徒の増加傾向と予測の試み-.発達障害支援システム学研究. 第22巻1号. pp.11-24

 本論文では通級による指導の対象者についてADHD、学習障害、および自閉症の増加傾向を多項式近似による数理モデルで提示するとともに今後の推移の予測を示した。現在のペースでの増加傾向が続くと、2031年頃には学校における「発達障害」の出現率として推定された6%を超え、2034年には9%に到達すると推測された。「発達障害」のある児童生徒は、そのすべてが常に特別な支援を必要としているわけではないにも関わらず、通常学級の役割と責任の拡大が制度化されないままの増加傾向は国連の懸念事項となるため、「通常学校での障害児教育の拡大」とは異なる視点に立脚する必要性と、今後の制度展開の見直しの必要性を指摘した。 PDF File Download 
是永かな子・石田祥代・松田弥花・眞城知己(2022) デンマークの後期中等教育機関におけるインクルーシブ教育制度.発達障害研究. 第43巻4号. pp.415-426  関連資料分析と聞き取り調査によって、デンマークにおける後期中等教育段階のインクルーシブ教育の制度について明らかにした。第一に後期中等教育段階は大きく2種類あり、移行のための予備基礎教育機関が設置されて義務教育終了後の進路は重点化する教育内容に従ってコース分けされていた。第二に特別な対応は、国が管轄する後期中等教育機関とは別にコムーネが管轄するSTU(STU法に規定される比較的重度障害のある子どもを対象とした25歳までの3年間の後期中等教育で個別の計画が作成される)と、比較的軽度障害のある子どもを対象としたSPSが用意されていた。SPSの教育は教育的インクルージョンを、STUの教育は社会的インクルージョンを目指していた。 PDF File Download 
Thet Mon Myat Myint Thu・眞城知己・關谷武司(2022) ミャンマーの幼児教育関係者のインクルーシブ教育に対するイメージ.発達障害支援システム学研究. 第20巻2号. pp.55-64  ミャンマーにおける幼児教育関係者(カリキュラム策定担当者、地区教育行政担当者、幼稚園長、幼稚園教諭、保護者、教育大学教員、教育大学学生)33名を対象に、インクルーシブ教育に関するイメージ調査を実施した。調査票はsanagi(2018)をミャンマー語に翻訳したものを使用した。その結果、障害のある子どもに限らず多様性を包含する教育環境を整えつつ、必要な専門的対応を確実に用意できるようにするというインクルーシブ教育の考え方をもっとも適切にイメージできていたのは実践に携わる幼稚園教諭であった。幼児教育制度策定萌芽期にあるミャンマーにおいては、今後、関係者の適切な協働によってインクルーシブな幼児教育制度の構築が進められることが期待された。 PDF File Download 
眞城知己(2019) イギリスの特別な教育的ニーズに関する教育制度の展開からの示唆.教育と医学. No.795. pp.36-42  イギリスでは特別な教育的ニーズに関する教育制度が用意されている。同国における特別な教育的ニーズ概念の提起から、その教育制度への位置づけとその本質的特徴や制度化の前提条件、各学校に求められる内容、コーディネーターの役割の本質などを概観しながら、同制度から得られる示唆について簡潔にまとめた。 出版社にお問い合わせ下さい 
是永かな子・眞城知己・石田祥代(2019) デンマーク・ボーンホルム自治体におけるインクルーシブ教育推進 ―2007年以降の地方分権改革との関連を念頭に―.発達障害支援システム学研究,第18巻1号,pp.67-77.  本研究では自治体外の教育資源を日常的に利用することが困難なデンマークのボーンホルム島におけるインクルーシブ教育推進方略の特徴を聞き取り等の調査研究で明らかにした。複数教員のCo-teachingや通常学級内での個別課題の提供、柔軟な小集団指導の他、PPR内に行政担当者、通常学校と特別学校教員によるリソースチームを設置し、巡回相談や教員研修等で通常学校教員の力量向上を目指していた。
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是永かな子・眞城知己・石田祥代(2018) デンマークにおける地方分権とインクルーシブ教育改革 ―Helsingør municipalityの2007年以降の変化に注目して―.高知大学学術研究報告,第67号, pp.25-38. Amt廃止後のデンマークにおけるインクルーシブ教育の展開に関するフィールド調査の一部を報告したものである。本研究ではHelsingør市を対象に調査し、インクルーシブ教育の進展のために1)学区の見直し、2)集中的な特別学校担当部局の設置、及び、3)通常学級の教師の知識と指導技術の改善の3点が進められていることが明らかにされた。
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Sanagi,T.(2018) Teachers' Expectation to the Role of Special Needs Coordinator in Japan - a comparison between primary and special needs school -.International Journal of Humanities and Social Science vol.8, No.3, pp.13-16 (ISSN 2220-8488)  特別支援教育コーディネーターは障害のある子どもも含めすべての子どもに対して効果的な学校を開発する上で重要な役割を担っている。本研究では小学校と特別支援学校の教師を対象にコーディネーターに期待する役割の相違を明らかにすることを目的とした。178人の教師への調査から、小学校では校内委員会の運営や日常の対応への助言、及び子どもの記録の役割への期待が強く、特別支援学校では外部の機関との連絡・調整と近隣の通常学校への支援の提供の役割が期待されている特徴が明らかとなった。
(全編英文)
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石田祥代・是永かな子・眞城知己(2018) 北欧における学齢児支援システムの特徴と課題.東京成徳大学研究紀要-人文学部・応用心理学部-, 第25号,pp.137-148.  北欧4カ国(デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)における学齢児支援システムの比較検討のために質問紙調査及び半構造化面接調査を実施した。1)特別支援、2)教育心理支援、3)教育福祉支援の3つの視点から分析を行った結果を、就学前教育の強化や継続教育、個別計画の活用、相談センターや特別学校のセンター的活用とともに各市内での生徒支援チームの設置等の有効性が浮かび上がった。
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細川かおり・眞城知己・磯山多可子(2017) 知的障害特別支援学校における道徳に関する検討 -生活単元学習における取り扱いとより明確な位置づけの模索-.千葉大学教育学部研究紀要 第64巻, pp.129-136.  知的障害特別支援学校における道徳教育について、文献の検討を中心に、教育課程上の位置づけのあり方について考察した。知的障害児の学習活動は日常生活と密接に関連させる点に特徴があるが、道徳はまさに日常生活に素材を求める学習活動であることから、領域・教科を合わせた指導との親和性が高い。他方、従来の生活単元学習等においては、道徳の要素について明記することが不十分であり、指導案や個別の指導計画への明示の必要性を指摘した。分担執筆した箇所では、肢体不自由教育における類型別教育課程上への道徳の位置づけの特徴と、今後の方向性について述べた。
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Sanagi,T.(2016) Attitudes to normalisation and inclusive education.Journal of Research in Special Educational Needs, vol.16, no.s1, pp.229-235. Inclusive and Supportive Education Congress(ISEC2015)において報告した内容を核に内容の加筆修正をしたものである。教師の有するインクルーシヴ教育のイメージとノーマライゼーションのイメージとがどのような関係性を有しているのかを分析した研究である。138名の教師にノーマライゼーション理念のイメージ調査を実施し、同理念のイメージをを5要因に整理した。さらに、sanagi(2015)のインクルーシヴ教育に関するイメージとの関連性を分析したところ、3つのタイプに整理できた。ノーマライゼーションに対するイメージが肯定的な教師は、インクルーシヴ教育を特徴付けるイメージを通級による指導と密接に関連づけていたことや、ノーマラーぜーションについて何かしら社会的に「派手な」イメージを有している教師は、分離された学習を強く否定する傾向があることなどが明らかとなった。(全編英文)
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Sanagi,T.(2016) Teachers' misunderstanding the concept on inclusive education.Contemporary Issues in Education Research, vol.9, no.3, pp.103-114.  182名の教師を対象にインクルーシヴ教育に対する態度調査を実施し、概念理解の特徴と課題を分析した。その結果、インクルーシヴ教育は「環境が拡がって生徒を包含、抽出指導、少人数集団、障害児が他の子ども集団の中にいる」とのイメージが持たれていた。回答傾向を詳細に分析するためにクラスター分析を行ったところ、回答者の所属学校の設置地域との関連性、特に外国籍児童生徒の在籍割合との関連が弱く示唆される結果が得られた。(全編英文)
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松本優子・真城知己(2016) 肢体不自由教育における指導力向上の模索 -教員養成段階での医療的ケアに対する意識向上を目指して-.千葉大学教育学部研究紀要, 第63巻, pp.77-82.  本研究は新任の肢体不自由教育教員養成における医療的ケアに関する指導力向上の基礎を獲得させるために有効な知見を得ることを目的とし、医療的ケアの内容と医療的ケアに関わる連携についての講義を行いその前後に意識調査を実施して変化の特徴を検討した。その結果、知識の増加とともに、医療的ケアに携わる教員として他職種との協働の意識に変化をもたらされたことが確認された。特に医療的ケアの担い手としての自らがどのような行動をとれば良いのかを具体的に意識するようになった点に意義があると考えられた。
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真城知己(2016) デンマーク(2) -自治体ごとに異なるインクルーシヴ教育への道筋-.特別支援教育研究, 第703号, p.29.  急激な財政負担への対策のためにデンマーク政府は、複数のプロジェクトを立ち上げて対応を模索し始めた。全国98市の中の12市を指定したインクルーシヴ教育に関するプロジェクトでは、学校長の意識改革から着手した市、現職教員のリーダー養成を核に据えた市、個別指導から集団指導に重点を変え、外国の教育哲学を導入した市、さらには長年、特別学校を意図的に未設置にしてきた市が特別学校をあえて新設して新しい仕組み作りを始めるなど、自治体間の多様性が一層拡大していることを論じた。
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真城知己(2016) デンマーク(1) -地方分権の進展による影響-.特別支援教育研究, 第702号, p.29.  デンマークでは元来教育制度においても地域間の相違が大きかったが、2007年の大規模自治体再編により、すべての県(AMT)が廃止されたことで、これが一層顕著となった。総ての特別学校は市に移管され、他市設置校に通うためには追加の財政負担が必要となった。そのため、各市に特別学級等の新設が相次ぎ、自治体再編を境に分離された環境で学習する生徒の割合とそこにかかる費用が急増することとなったことなどを概説した。
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Sanagi,T. and Matsumoto(2015) Teacher's image on inclusive education - classification using conjoint analysis -.International Journal of Multidisciplinary Thought vol.5, no.4, pp.351-364.  本研究は、sanagi(2014)に引き続き、教師のインクルーシヴ教育に対するイメージ調査を138名の教師を対象にして実施したものである。そして、態度の特徴を部分効用値の特徴をもとにして分類したところ、6つのタイプに整理できることが示された。本稿はSanagi and Matsumoto(2015)で報告された内容に、さらに詳細な分析等を加筆修正したものである。結果として、先行研究と同様に日本の教師のインクルーシヴ教育のイメージが学習集団の大きさや形態によって大きく影響されている傾向が依然として続いていること、また概念に忠実に理解できている教員が少ないことが細かいタイプ分けによっても示された。(全編英文)
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内海友加利・真城知己(2015) イングランドにおける特別な教育的ニーズのある子どもの学校選択制度を支える仕組み -各地方教育当局に存在する職種に注目して-.発達障害支援システム学研究, 第14巻2号, pp.49-58.  本研究ではイングランドにおける特別な教育的ニーズのある子どもの学校選択制度の特徴を明らかにすることを目的とした。学校選択を支える職種はSENチーム、SENCo、心理士、選択アドバイザーとペアレント・パートナーシップが挙げられた。各地方教育当局の職種の分布を調査して学校選択の過程を検討した結果、選択アドバイザーの数が圧倒的に少なかった。情報提供の在り方は自治体ごとに異なるが、複数の職種が同時に関わるプロセスと特定の職種が中心となり他の職種と連携を図るプロセスの存在が示された。
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真城知己(2015) 小・中学校教師と特別支援学校教師のインクルーシヴ教育に対するイメージの特徴.発達障害支援システム学研究, 第14巻1号, pp.27-34.  通常学校と特別支援学校の教師のインクルーシヴ教育に関するイメージの特徴と相違を明らかにすることを目的とした。138名の教師の回答から通常学校教師は「通級指導」の形態を、特別支援学校教師は「分離された学習機会の否定」を各々インクルーシヴ教育を象徴するイメージであるととらえたことが明らかとなった。インクルーシヴ教育の用語の普及と通級指導の急速な拡大の時期の符合や、インクルーシヴ教育の推進が特別学校の縮小を招くのではないかといった意識が背景にあると推測された。
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内海友加利・真城知己(2015) イングランドにおける特別な教育的ニーズのある生徒の中等学校選択制度の特徴-アプリケーション・フォームに注目して-.千葉大学教育学部研究紀要, 第63巻, pp.199-203.  中等学校選択の際に本人と親が希望する学校を申請するためのアプリケーション・フォームは特別な教育的ニーズのある生徒も同じ書式を利用する。本研究では、イングランドの18州のアプリケーション・フォームを入手してその特徴を分析した。判定書を発行されていない生徒の場合でも優先的に就学先を定める取り扱いがなされていることが明らかとなった。
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真城知己(2014) イギリス(2)-合理的配慮とインクルーシブ教育の理解のために-.特別支援教育研究, 第681号, p.29.  合理的配慮とインクルーシブ教育の展開について、イギリス固有の「特別な教育的ニーズ」への対応制度の特徴を背景にした通常学校の責任の拡大傾向との関連で理解するための視点を論じた。
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真城知己(2014) イギリス(1)-特別な教育的ニーズの考え方による制度のある国-.特別支援教育研究, 第680号, p.29.  イギリスにおける特別な教育的ニーズへの対応に関する様々な制度は、その登場背景を紐解けばいずれも子どもと学習環境との相互作用によって規定される特別な教育的ニーズの概念が底流にあることにたどりつく特徴を有していることから、この点を念頭においた理解の必要性を論じた。
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真城知己(2014) 各国における合理的配慮を理解するための視点.特別支援教育研究, 第677号, pp.12-15.  各国における合理的配慮を理解するための視点を整理した。障害者権利条約の背景となったアメリカ合衆国のADAが「障害があることを前提とした差異に応じた処遇の発想」を有することから、合理的配慮が個別提供という形として提起されたことや、欧州連合の個の尊重を背景とした位置づけなどを取り上げた。合理的配慮を教育への実質参加の保障という社会的責任を明確にしながら展開する必要性を指摘した。
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真城知己(2013) 教科書指導書への特別支援教育の視点導入に関する研究 -新しい教科書開発の視点構築に向けた教師への意識調査-.発達障害支援システム学研究, 第12巻1号, pp.1-10.  本研究では小学校用の教科書指導書に特別支援教育の視点を取り入れるための手がかりを得るため、質問紙調査法により272名の教師の回答を分析した。教科書指導書に学習困難、障害特性、学習進度のはやい児童への特別支援の記載方法、多様な集団で個々の児童に指示する問題の手がかり、及びグループ学習における配慮事項の記載を、大きく3種類に分けて示すことが合理的である可能性を導いた。共同学習の際に教科書を利用した学習活動を行う際の特別支援に関する配慮事項の指導書への記載について考察を加えた。
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是永かな子・真城知己(2013) デンマークにおける地方分権とインクルーシブ教育の実際 -Aabenraa, Lolland, Guldborgsund, Kalundborg municipalityの2007年以降の変化に注目して-.高知大学教育学部研究報告, 第73号, pp.115-121.  本研究では、デンマークにおける2007年のAMT廃止後のインクルーシブ教育の展開について4つの市の展開の特徴について分析を行った。その結果、1)通常学校における教育、2)特別ニーズ教育に関する資源の開発、及び3)他の市との協同という3つの点における傾向が見られることが明らかとなった。各市では固有のインクルーシブ教育の展開に向けた独自の選択をしていることが明らかとなった。
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真城知己(2012) インクルーシヴ教育実験学校の構想(2)-学校教育目標を考えるために-.千葉大学教育学部研究紀要, 第60巻, pp.333-339.  インクルーシヴ教育実験学校は、従来の学校種枠では検討できなかった課題を検討できる点に意義がある。本論では「完全参加」と「当事者主体」の2つのキーワードについてとりあげ、現在の学校種枠では通常学校への障害児の統合や同化教育に陥りやすいことが危惧されることを指摘した。学校教育目標の設定に際しては、「子ども主体」や「当事者主体」の意味するところの「自らが関わる周囲に影響を与える主体であること」に関する学習機会の設定と、リーダーの養成を念頭におく必要性を導いた。
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是永かな子・真城知己(2011) デンマークにおける地方分権とインクルーシブ教育の展開.高知大学学術研究報告 第60巻,pp.47-60.  3年間の調査をふまえて、デンマークにおけるインクルーシブ教育がどのように進められているのかを報告したものである。2007年以降のデンマークにおける地方分権とインクルーシブ教育の展開を3つのタイプに整理した。第一は、通常学校をより包括的な方向に進めた自治体である。第二は、新しい教育資源の開発を進めたタイプの自治体である。第三は、費用を払って隣接する自治体の資源を利用することにした自治体である。
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真城知己(2011) イギリスにおける中等学校への就学に際しての親の学校選択支援制度の特徴.発達障害支援システム学研究, 第10巻2号, pp.79-87.  イギリスにおける公立総合制中等学校の選択の際の親への支援の特質について明らかにした論文である。判定書を発行されている特別な教育的ニーズのある生徒の場合には、他者に最優先で学校選択ができることや、中立的な学校情報提供のための「選択アドバイザー」、不服申し立てシステムにおける「ファシリテーター」の存在等が特徴的であった。これらは1980年代以降の「パートナーとしての親」の位置づけの流れにある、親と地方教育当局との関係を良好にしながら子どもに最善の選択をもたらせるように意図されたものであると考えられた。
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真城知己(2011) 我が国におけるインクルーシブ教育に向けての動向の整理.特別支援教育研究, 第650巻, pp.4-6.  日本において「インクルーシヴ教育」の概念はきわめて誤解が多く、このことが実践における妨げになっている。そこでインクルーシヴ教育の正確な概念について論じるとともに、国連障害者の権利条約に規定される「合理的配慮」への対応とあわせながら、日本の学校教育における「多様性の包含」への方向性が導かれることを明らかにした。
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真城知己(2011) インクルーシヴ教育実験学校の構想 -検討課題の設定に向けて-.千葉大学教育学部研究紀要, 第59巻, pp.1-6.  インクルーシヴ教育に関する実験学校の必要性を、国連の動向を背景にしながらインクルーシヴ教育の考え方と特別な教育的ニーズ論の特徴を基軸に据えて論じた。日本での障害者権利条約の批准に向けた流れの中で、「個々の教育的ニーズの多様性を包含する範囲を拡大するプロセス」における具体的課題を検証するために、従来の学校種や制度を超えた実験学校が必要であることを論じた。
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真城知己(2010) 19世紀イギリスにおけるラグド・スクールと肢体不自由教育.SNEジャーナル(日本特別ニーズ教育学会), 第16巻, pp.97-111.  19世紀半ばのイギリスでは最貧困層の劣悪な生活実態を背景にラグド・スクールに多くの肢体不自由者がおり、彼らへの教育が行われていた。本論文で取り上げた肢体不自由ホーム・実業学校の特徴は、骨関節結核への感染防止のための換気に配慮した建築構造や医師の協力による栄養状態の改善への取り組みによる肢体不自由者特有の課題への対応と、実業学校の重要な役割であった貧民収容部門の入所者による19世紀後半に急速に需要が増した家政婦の訓練も兼ねた肢体不自由者への日常生活支援の提供という二つの側面を同時に備えることができていた点であった。この実践の意義がラグド・スクール協会によって強調されたのであった。
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真城知己(2010) イギリスのインクルーシヴ教育.発達障害研究, 第32巻第2号, pp.152-158.  イギリスにおけるインクルーシヴ教育の特質を完全な特別学校の廃止や、統合か分離かという視点でとらえるのは正確ではない。イギリス政府が一貫して特別学校の役割について明確な位置づけを持たせるとともに通常学校における教育の質の向上を強調した制度を展開している特質と制度的必然性について論じた。イギリスのインクルーシブ教育「制度」は、通常学校も特別学校もともに教育の質を高めつつ、相互に協力関係を構築して子どもたちの多様性をより効果的に包含することを目指している点に特徴がある。
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真城知己(2010) 交流及び共同学習と障害理解教育.特別支援教育の実践情報(明治図書), 第136号, pp.8-11.  交流教育や共同学習における障害理解教育の実践を考える上で、単に障害に関わる不自由さの体験のような障害理解ではなく、子どもたち自身が日常生活において「不自由さ」を生み出していることがあるという視点を持つことや、授業における役割の固定化を避ける必要性、障害のある子とない子の双方向の影響のバランスを考慮すること、及び、すべての子どもが活動において欠かせない位置づけになる「仕掛け」の設定について論じた。
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真城知己(2010) 19世紀イギリス肢体不自由教育史研究序説 -問題の所在と課題設定-.千葉大学教育学部紀要(教育科学編), 第58巻, pp.1-8.  本稿では現在の障害種別の障害児教育制度の枠組みについて、歴史的な検討を加える意義を研究の契機とし、19世紀後半のイギリスにおける組織的な肢体不自由教育の開始と初期の発展要因の解明に焦点を当てた研究課題について述べた。そこでは、1)組織的な肢体不自由教育の開始要因の歴史的文脈を明らかにすること、2)慈善組織協会による肢体不自由教育の社会的喚起の動因と特質を明らかにすること、及び、3)19世紀後半の基礎学校における肢体不自由教育の特質を明らかにすることが研究課題として導かれた。
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Sanagi,T.(2009) Teacher's attitudes towards SENCO's roles in mainstream schools in Greater Manchester - Colleague Teacher's View at primary and secondary schools-.Japanese Journal of Special Education, vol.46 no.6, pp.503-514. This study highlited teacher's attitudes towards roles of Special Educational Needs Coordinator in England. 71 teachers as participants, working at primary and secondary schools in Greater Manchester county, estimated items on importance and expectation of SENCO's roles, and items on the extent of its fulfillment by SENCO with postal questionnaire. The result was discussed on 1)teacher's attitudes towards fulfillment of SENCO roles and 2)comparison between importance/expectation and fulfillment. A comparison between primary and secondary teachers was also argued. Findings confirmed teachers reted highly at expectation of advices on how to teach, implementation of IEP, and assessment of pupils' needs. However, teachers regarded its fulfillment by SENCO as rather keeping records, registers, and/or the Statements, assessing pupils' needs, and, in secondary school, direct teaching. As conclusion, for collaboration and sharing roles in schools, in-service teacher training and consideration of interactive model of special educational needs was emphasized.
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真城知己(2008) 教育分野における調査研究.発達障害研究, 第30巻第5号, pp.399-403.  特に教育分野での調査に基づいた研究の進め方に関して、1)ニーズの調査、2)観察による情報収集、及び3)歴史研究での調査の3点を取り上げながら、学術研究に耐えうるデータ収集の方法について論じた。
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真城知己(2008) イングランドにおける小学校及び中等学校教師の特別な教育的ニーズ・コーディネーターの役割に対する意識.発達障害支援システム学研究, 第7巻第2号, pp.51-58.  イングランド北西部の小・中等学校教師71名を対象にした特別な教育的ニーズ・コーディネーターの役割に関する調査の結果、校内のコーディネーション、同僚教師への支援、教職員のマネージメントに対する期待が高いことが明らかとなった。また、同僚教師から期待される内容がコーディネーター本来の役割を果たす上で手が回らない状況の遠因になっていることも示唆されたことから、教師やティーチング・アシスタントの現職教育を通じて学校全体の教育の質を高めることが重要であると考えられた。
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真城知己(2007) デンマークにおける「拡大特別ニーズ教育」 -2007年地方分権制度再編前までの特徴-.障害科学研究, 第31巻, pp.153-159.  デンマークでは,各市が責任を持つ特別ニーズ教育に対して,国が責任を持って対応する「拡大特別ニーズ教育(vidtgående specialundervisning)」と呼ばれる制度がある。デンマークは地方分権が進んだ国として知られるが,これを背景として拡大特別ニーズ教育も地域差が大きいことを1991/92年度から2003/04年度までについてまとめた資料を用いて示した。そして、さらに地方分権が進められる政策によってどのような展開が見られるのかについて、動向に注目する必要性を指摘した。
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Sanagi,T.(2007) Rethinking the concept of "Special Educational Needs" - an interactive model -.Bulletin of the faculty of education, chiba university, vol.55, pp.1-5. 「特別な教育的ニーズ」の概念は,特別ニーズ教育を具体的に推進する上でその方向性を左右する重要な概念であるが,これをめぐる理論的混乱の解決のために,同概念が提起された課題意識をふまえた相互作用モデルについて論じた。インクルーシヴ教育を目指す上では,環境要因の分析とそれをふまえた対応が不可欠であり,相互作用モデルがこれに耐えうる考え方であることを示した。(全編英文)
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真城知己・加瀬進(2006) 特別な教育的ニーズ論とコーディネーターの役割 -福祉分野でのコーディネーターの取り組みからの示唆を加味して-.発達障害研究, 第28巻第1号, pp.32-35.  特別支援教育制度の開始前の時点で、理論的基盤の脆弱なコーディネーター論を考えるために福祉分野のコーディネーターの経験知を加味した対談の要点。コーディネーターの役割を「連絡調整」ばかりに意識をおいた「ジョイント型」ではなく、諸機関間の効果的な連携のためには「接点形成型」にすることが有効であることやそれに対応するために学校の校内資源の整備が重要であることが導かれることや連絡調整の対象は「機関」ではなく、「サービス」であることを意識する必要性などを指摘した。
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真城知己(2006) 特別な教育的ニーズ論と専門性 -インタラクティブ・モデルの視点-.支援教育の展望, 第141号, pp.4-9.  特別な教育的ニーズ論の中のインタラクティブ・モデル(相互作用モデル)に焦点をあてて、今後の特別支援教育への応用方法について、特に環境要因が特別な教育的ニーズに影響を与える構造をふまえながら論じた。
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真城知己(2005) 専門性と学校の支援体制.支援教育の展望, 第140号, pp.64-68.  子どもの教育的ニーズの把握を専門的に行おうとする際に子どもの特性だけでなく、学習環境の影響を考慮する特別な教育的ニーズ論の視点から、学校における支援体制において、各教師がすでに保有している資源を共有することの重要性を論じた。
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真城知己(2005) 今後の特別支援教育を考えるためのキーワード.支援教育の展望, 第138号, pp.58-61.  3つの学校での教育実践において生じた問題を端緒に、特別支援教育制度下で解決の方向性を導くためのキーワードとして、「専門性と学校の支援体制」「連携と専門性」及び「インクルージョンと特別ニーズ教育」の3つを挙げて論じた。
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真城知己(2005) 特別支援教育における校内支援体制とコーディネーターの役割.特別支援教育千葉, 第2号, pp.2-9.  特別支援教育制度を迎えるに際してコーディネーターの役割に注目が集まるようになったが,彼らの役割は、単に関係機関との連絡調整、すなわちニーズのある子どもに専門的支援を結びつけることにあるのではなく、それぞれの学校の状況に応じた新しい支援やその提供方法を「創り出す」ことにコーディネートの本質があることを小・中学校と盲・聾・養護学校にわけて指摘した。
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真城知己(2005) 特別支援教育コーディネーターの養成 -養成講座受講生への意識調査の分析-.千葉大学教育学部紀要(教育科学編), 第53巻, pp.119-124.  特別支援教育コーディネーターの役割,専門研修への希望,及び特別支援教育に関する同僚教師への意識について,小学校及び中学校から候補者として養成講座に参加した152名の教師の回答を分析した。特別な支援のコーディネート,保護者や同僚教師との関係形成に役割の柱があると意識される一方で,校内の現職教育や,支援体制の要点である校内委員会の運営,記録管理等については相対的にあまり重視されていないことなどが明らかとなった。研修希望として,指導計画の作成を含めた直接指導の方法や,学校をインクルーシヴにすること等への希望が強いことも示された。
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真城知己(2004) インクルージョン.発達の遅れと教育, 10月号(通算566号).pp.  サラマンカ声明についてふれつつ、インクルージョンの概念は、子どもよりもむしろあらゆる学校が子どもの多様性に対応できるように再構築を促す概念であることを明らかにした。 出版社にお問い合わせ下さい 
真城知己(2004) イギリスの「特別な教育的ニーズ・コーディネーター」の理解のために.発達の遅れと教育, 2月号(通算558号), pp.36-38.  イギリスの特別な教育的ニーズ・コーディネーターの役割について,日本では「連絡・調整」等に重点が置かれた紹介がされているが,実際には「年次レビュー」を核にした学校整備にその本質的役割があることを明らかにした。
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真城知己(2004) イギリスの「特別な教育的ニーズ・コーディネーター(SENCO)」の小学校における協同.千葉大学教育学部 教育実践研究, 第11号, pp.55-64.  特別支援教育制度においては,通常学校,特別支援学校を問わず「特別支援教育コーディネーター」が重要な役割を果たすことが期待されているが,日本ではこれに関する理論がない。本稿は,イギリスの小学校2校における特別な教育的ニーズ・コーディネーター(SENCO)の各学校における協同の例を取り上げ,適切な校内体制づくりのために必要な要素について論じた。そして,通常学校における特別な教育的ニーズへの対応には,学習支援アシスタントなどのスタッフの配置が不可欠性,及び,スタッフ間の日常的な意見交換の機会を確実に用意することの必要性について指摘した。
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真城知己(2003) 英国における移行支援の制度と実際.肢体不自由教育, 第162号, pp.38-43.  特別な教育的ニーズのある生徒の中等学校からの移行支援に関わるコード・オブ・プラクティスの規定と、コネクション・サービスを中心とした第9学年に重点のある実践について中等学校と継続教育カレッジの例をあげて論じた。
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真城知己(2003) イギリスの動向に見る障害児教育の専門性と教職員 -SENコーディネーターについて-.障害者問題研究, 第31巻3号, pp.46-54.  イギリスの特別なニーズ教育の各学校での実践の核となるSENコーディネーターに焦点をあて,改訂コード・オブ・プラクティスに示される役割と課題を指摘した。さらに,質問紙調査によってコード・オブ・プラクティスの内容や同僚教師,及び研修へのニーズについて,その特徴と課題について明らかにした。今後の課題として,各学校が学校全体として子どもの特別な教育的ニーズへの対応の力を高めることを原点に,専門性のあり方を考えるべきことを指摘した。
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真城知己(2003) 改訂コード・オブ・プラクティスのSENCOへの影響と課題 -IEPに関わる内容を中心に-.SNEジャーナル, 第9巻第1号, pp.67-81.  各学校において特別な教育的ニーズをもつ生徒への適切な対応の鍵となるSENCOの役割と責任について規定した改訂コード・オブ・プラクティス(2001)の,特にIEPの作成に関する内容の影響と課題について検討した。その結果,SENCOの負担軽減の視点は盛り込まれているものの,これまで以上に過剰な負担を強いる可能性がある課題を明らかにした。また,その解決のためには,各学校の特別な教育的ニーズに関する体制整備が伴うことが不可欠であることを指摘した。
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真城知己(2002) 教員養成課程における「障害理解教育」実践者養成に関する研究 -意識変化の特徴検討へのコンジョイント分析の応用-.発達障害研究,(日本発達障害学会, 第23巻第4号, pp.267-275.  本研究は従来取り扱われることが比較的少なかった知的障害に関する障害理解教育の実践者養成の試みを行った。教員養成課程の学生に模擬授業の計画・実施を体験させ,その過程での学生の意識変化について検討した。その結果「偏見や差別意識の改善」と「子ども同士の対等な関係形成の促し」に関する内容をより重視して意識されるようになる傾向が認められた。模擬授業では児童文学作品を利用したが,その内容が結果に影響していることがうかがわれ,児童文学作品の特性を十分に意識した実践の有効性が示唆された。なお,意識変化の比較にはコンジョイント分析を応用した。
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真城知己・高橋志野・中村章子(2002) 現職教員の免許状取得ニーズのコンジョイント分析 -個別プロフィールによるタイプ分類-.千葉大学教育学部紀要(教育科学編), 第50巻, pp.127-135.  教員免許状の取得機会へのニーズをより正確に把握して保有率向上を図るための手がかりを得ることを目的とした。千葉県下の現職教員への調査の結果,先行研究と同様に「校務からの専従免除」と「開講の形態」が重視されていた。さらにコンジョイント分析の個別プロフィールから5つのサブグループに分類した。「在籍時の身分の要因を重視した群」,「開講の形態の要因を重視した群」,及び「特定の要因のみを重視する傾向が弱かった群」に全回答者の90%以上が含まれていた。これらの群間で回答者の年齢層や所属学校・学級種との関連性は認められなかった。
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真城知己(2002) 現職研修機会と教員免許状の資格認定の連動に対する意識 -千葉県における調査のコンジョイント分析-.特殊教育学研究, 第39巻第4号, pp.47-56.  現職教員を対象にした教員免許状の取得機会は資質向上への志向を十分に意識すべきとの考えのもとに,千葉県下の現職教員を対象に研修機会と教員免許状の取得機会との連動に関する意識調査を行った。その結果,1)研修機会ごとに研修内容と方法へのニーズが整理されるとともに,2)特殊教育教員免許状の取得機会として認定講習と特殊教育特別専攻科が志向されていること,3)「連動」については研修機会の「場」がもっとも重要な判断条件とされていることが明らかとなった。特に大学の公開講座への認定希望が強かった。なお,本研究ではニーズ調査の方法にコンジョイント分析を応用した。
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真城知己(2001) 特殊教育教諭免許状の保有と校内体制の整備 -「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」への意見-.SNEジャーナル, 第7巻第1号, pp.29-31.  「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」に関する意見論文として,特殊教育教諭免許状の保有問題と校内体制の整備について論じた。前者に関しては,免許状の保有とその後の研修の連続性や一種免許状取得と研修との連動について,後者には校内での責任分担の偏り是正のための個別の指導計画の活用などについて意見を述べた。
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中村章子・真城知己(2001) 病弱教育における「連携」研究の動向と課題.千葉大学教育学部教育実践研究, 第8号, pp.101-111.  病弱教育における「連携」は教育保障上の課題として,その必要性が強く認識されている。本研究では「連携」が注目されるようになったこの20年間の研究動向を83本の文献の分析から検討した。その結果,「連携」のシステム化やキーパーソンの検討などが取り上げられていたが,具体的な方策にふみこんだ検討が不足していることが明らかとなった。今後,「連携」にかかわる医療・教育・家庭などの相互の役割や機能の共通認識を図るといった基盤整備が必要であることを指摘した
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真城知己(2001) 現職教員の研修機会の設定への要望に関する予備調査, 千葉大学教育学部紀要(教育科学編), 第49巻, pp.151-158  千葉県下の現職教員を対象に,教委研修会や大学公開講座などの様々な研修機会について学習内容等に関する要望の調査を行った。結果は,以下の点に整理した1)校内研修では授業や事例研究,2)教委研修会では最新情報と情緒面の指導,3)学会では最新情報の収集,4)各種研究会では事例研究,5)大学公開講座では社会的・教育的問題の理解などがそれぞれ希望されていた。また,研修機会ごとに参加頻度の希望も異なっていた。いずれも各機会の特徴をふまえたものであったが機会の絶対量の不足と参加困難な状況への対応等の課題について整理した。
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近澤真由・真城知己(2001) 障害理解教育の模擬授業経験学生の意識.草の根福祉, 第31号, pp.141-149.  障害理解教育の模擬授業への取り組みに参加した学生に対する調査をもとにその経験によって「学習したと考えていること」模擬授業への参加の際に「考えたこと」及び「今後さらに学習したいこと」について意識の内容を整理した。その結果,障害理解教育の奥深さや必要性を十分に意識するとともに各自の知識の不十分さが自覚され,「障害」に関する学習をより積極的に行いたいという強い意欲が喚起されていたことが明らかとされた。
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真城知己(2000) 21世紀に向けたイギリスにおける特別な教育的ニーズへの対応.養護学校の教育と展望, No.116, pp.52-57.  イギリスにおける「特別な教育的ニーズ」への対応の展開について制度的展開について述べた上で,緑書「すべての子どもに優れた教育を(Excellence for all children)」,「特別な教育的ニーズへの対応(SEN行動計画)」「特別な教育的ニーズ裁定委員会(Special Educational Needs Tribunal:SENT)」及び「SENコーディネーター(Special Educational Needs Coordinator:SENCo)」について取り上げて,21世紀に向けた最新の動向と課題について論じた。
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真城知己(2000) 千葉県における現職教員の大学での研修機会への要望に関する一考察 -特殊教育諸学校,特殊学級及び通常の学級の教員への調査-.千葉大学教育学部紀要(教育科学編), 第48巻, pp.139-155.  大阪府下において行った研究をふまえ対象を特殊学級及び通常の学級担任に拡大して実施した調査の報告を行った。分析は所属学校学級種別の比較,学習形態別の比較,及び総教職経験年数と特殊教育諸学校の経験年数の各観点から行った。結果として「情緒面」「ことば」「事例」「最新情報」を上位とする全体的な要望の強さが確認された。経験年数の短い教員ほど要望の強い傾向も認められた。ただし,経験年数の長い教員でも要望が低いわけではなく,常に最新の指導法や知見を継続的に学習できる機会を多様に保障することの重要性を指摘した。
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向井敦・平野聖子・真城知己(1999) 肢体不自由養護学校における作業学習での工夫に関する一考察.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門教育科学, 第47巻第2号, pp.425-433.  精神薄弱教育において開発された作業学習が肢体不自由教育においてどのような独自性をもつのかを明らかにすることを目的とし,特に作業学習の「工夫」に注目して検討した。作業学習の内容は,木工や農業,陶芸など,精神薄弱教育での活動内容と変わらなかった。作業工程や作業分担における工夫や自助具・補助具・道具の工夫,時間的配慮の実施等が確認され,これらが肢体不自由教育の特徴と考えられた。こうした工夫の結果,作業の正確性の向上,作業能率の向上,製品の質の向上に加え,生徒の意欲向上や作業姿勢の改善などがその効果として評価されていた。今後の課題として,生徒のもつ運動障害への配慮と知的障害への配慮がそれぞれ独立して行われるのではなく,両者の相互関係を考慮した配慮について一層の検討が必要であることを指摘した。
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真城知己,近澤真由(1998) 障害児教育教員養成課程学生の福祉系職業への就職志望について.障害児教育研究紀要(大阪教育大学障害教育講座紀要), 第21号, pp.17-33.  障害児教育教員養成課程に所属する学生で教員以外の進路(特に福祉職)をとるものが増加していることを背景に,今後の進路指導を検討するために計画された。学部2~4回生を対象に,入学時の志望学部,入学時と現在の志望進路,希望する仕事の性格,就職への支援に関する大学への要望,及び就職に向けた準備状況について質問紙による調査を行った。その結果,入学時点ですでに希望進路が教育系と福祉系に二分されていたことが明らかとなった。入学後は特殊教育諸学校教員を志望する学生が漸増する傾向が認められたが,採用試験枠の急減を受けて福祉系職種を志望し,その方面への就職情報の提供を強く求める傾向も確認された。課題として,就職に向けた準備が非常に遅く,早い学年から系統的な進路指導を行う必要性が指摘された。
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真城知己(1998) 大阪府下の特殊教育諸学校教員の大学における教員免許状取得への要望に関する調査.発達障害研究, 第20巻第3号, pp.91-97.  大学における特殊教育諸学校教員免許状の取得機会の充実を図る資料を得るために,聾学校及び養護学校教員330名を対象に調査を行った。その結果,年齢の若い教員ほど免許状の保有率が低く,取得形態では認定講習と特殊教育特別専攻科の希望順位が高かった。ただし,認定講習を最下位に評価する教員も多く両極傾向がうかがえた。大学に在籍すると想定した場合の教員免許状の取得に関する希望を,マーケティング領域で使用されているコンジョイント分析の手法を応用して分析したところ,課程の形態や年限などの要因と比較して遙かに校務からの専従免除が求められている状況が明確となった。
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真城知己(1998) 特殊教育諸学校教員の大学における現職研修機会への要望の検討 -大阪府下の聾学校及び養護学校教員への調査-.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門教育科学, 第47巻第1号, pp.139-152.  大阪府下の聾学校及び養護学校教員を対象に,大学における現職研修機会に対する要望調査の結果を報告した。大学院及び特殊教育特別専攻科(正規課程)と公開講座それぞれの場合について15項目の研修内容に対する評定結果を分析した。その結果,学校種間での有意差は認められなかったこと,全般的に学習への要望が強いが「情緒面」に関する希望が特に強く,また,全体としては公開講座よりも正規課程での学習への要望が強く,さらに年齢層によって希望する内容が異なっている(20代では指導法,50代では実践の位置づけなどへの関心がより高かった)ことなどが明らかにされた。
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真城知己(1998) 19世紀ロンドン慈善組織協会(COS)のラグド・スクールの役割への認識.関西教育学会紀要, 第22号, pp.146-150.  19世紀末にイギリスの慈善組織協会が肢体不自由児への教育の有効性について社会的喚起を促した際に取り上げたのは実業学校であった。ラグド・スクールはその前身の一つであり,最貧困層の家庭の子どもを対象にした学校であった。実業学校は「防貧」が主目的ではなかったが,慈善組織協会はこの点から肢体不自由児への有効な処遇策の一つとして評価したのであった。ラグド・スクールについても同じ観点からとらえられた可能性が高く,慈善組織協会が防貧の手段として教育の意義を認識する契機となったことが考えられたことから,機関誌を史料として検討した。
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真城知己(1997) 特別な教育的ニーズの評価の視点 -イギリスの動向を手がかりに-.SNEジャーナル, 第2巻第1号, pp.3-29.  特別な教育的ニーズの概念は,個体内要因への偏重から環境要因とその相互作用を視点として取り入れたことが特徴であるが,1981年教育法のもとではこの点をふまえた評価は十分ではなかった。現行の1993年教育法と施行規則及び施行細則の枠組みの中で,評価がどのような特徴と課題をもっているのかを整理した。具体的には,施行規則,施行細則及び実際の評価パッケージの例を検討対象として,特徴を整理したとともに,今後の方向性について課題となる視点を述べた。
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真城知己(1996) イギリスにおける特別なニーズ教育をめぐる制度的課題 -1993年教育法以前の地方教育当局の判定書作成における課題-.障害児教育研究紀要(大阪教育大学障害教育講座紀要), 第19号, pp.37-50.  イギリスにおいては,1981年教育法の施行後,地方教育当局の特別な教育的ニーズに関する「判定書」の作成が全般に低率である上に地方教育当局ごとの格差が拡大する事態が生じた。本稿では,1993年教育法の施行以前の時期を検討対象とし,特別な教育的ニーズ概念の制度的導入を支える財政的保障の欠如の問題に加えて,地方教育当局と学校との関係をめぐる制度的問題について,現行法である1993年教育法の特別な教育的ニーズ関係の規定にも影響を与えたAudit Commission and HMIによる2つの報告書の勧告もふまえながら検討を行った。
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真城知己(1996) イギリスにおける慈善組織協会の障害児教育への貢献に関する研究 -肢体不自由教育への意義を中心に-.特殊教育学研究, 第34巻第2号, pp.21-32.  19世紀後半にイギリスの都市部の貧困問題の解決を意図して設立された慈善組織協会(C.O.S.)が障害児教育の領域に対しても重要な提言をしていたことが知られている。本研究では,特に肢体不自由児者への慈善的対応の限界と彼らへの教育の必要性が主張されるに至る過程を検討した。その結果,1)C.O.S.は肢体不自由児者も自助努力を払うべき対象として基本的に例外扱いはしなかった,2)教育は慈善的救済での対応の限界の打破の一手段として考えられた,3)肢体不自由児者に対する実業教育が一定の成果をあげていた一方で4)何の対応もなされないままにされている肢体不自由児者が多数いることを社会に公にしたことの意義が認められた。
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真城知己(1996) イギリス19世紀後半のIndustrial Schoolと肢体不自由児 - Cripples' Home Industrial School for Girls, Marylebone Road について -.関西教育学会紀要, 第20号, pp.91-95.  イギリスにおいて肢体不自由児に最初の組織的な教育を行った女子肢体不自由ホーム・実業学校は,肢体不自由児を対象にした施設で唯一Industrial Schoolとしての認可を受けた学校でもあった。本研究ではこの学校に焦点をあて,①生徒の構成及び治安判事命令による強制収容措置者の割合,及び②教育活動の状況について,視学官報告を史料に検討した。その結果,この施設ではIndustrial Schoolとして強制収容措置者を引き受けることをあまりせず,生活態度への配慮は行いつつも,もっぱら肢体不自由児への職業教育に重点をおいていたことが明らかとなった。また,生徒の障害の程度は,身辺自立の世話を貧民収容による生徒に求める必要のある場合もあったが,一定の作業能力のあるという意味で「軽度」であることが理解できた。
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真城知己(1996) イギリスにおける特別な教育的ニーズ概念の教育制度への位置づけに関する研究(1) -1981年教育法案審議の分析-.兵庫教育大学研究紀要,第16巻,第1分冊(学校教育・幼児教育・障害児教育), pp.101-108.  1981年教育法によって制度的に導入された特別な教育的ニーズの概念の導入背景は現在でも明確にされていない。本研究では1981年教育法案における同概念の定義に関する原案と修正案の審議の焦点を明らかにすることで同概念の導入がどのような問題の解決を意図されていたのかを探ろうと試みた。しかし結果として,特別な教育的ニーズの定義に関する議論では,背景となる問題状況にふれられることなく,単に対象の範囲についての議論に始終していたことが明らかとなった。
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真城知己・名川勝(1995) イギリス1993年教育法の特別な教育的ニーズを持つ子どもに関する規定.筑波大学リハビリテーション研究, 第4巻第1号, pp.69-73.  イギリス1993年教育法第3部(特別なニーズを持つ子ども)は新しい障害児教育の枠組みを提供した1981年教育法におきかわるものである。従ってその規定は80年代特有の実践的課題を背景に持つ。しかし同時に同法は教育への市場原理の導入を図る1988年教育改革法の路線を継承する憂慮すべき性格も持つ。本稿ではこの第3部の規定の概要を紹介するとともに1981年教育法からの修正条項の整理をした。また同法の抱える課題にも触れた。
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真城知己(1994) 19世紀末イギリス公立基礎学校における肢体不自由児 -在籍率とそのとらえられ方-. 特殊教育学研究, 第32巻3号, pp.49-56.  19世紀末に行われたWarner,Fによる2回の調査での公立基礎学校における肢体不自由児の出現率は約0.3%であった。この値が救貧法学校等の場合よりも小さいのは、①一般的な授業料納付困難状況,②学務委員会が通学手段確保の費用支出権限を持たなかったこと,及び③保護者の意識の3点に要因が求められた。また,公立基礎学校においては「肢体不自由」という一次的障害ではなく,二次的に発生した学習の遅れに焦点があてられており,肢体不自由児の在籍は教育上の積極的理由に基づくものではないことが明らかにされた。
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真城知己(1994) イギリス19世紀末の精神遅滞特殊学級に在籍した肢体不自由児-「欠陥児・てんかん児委員会」における教師等の証言 -, 関西教育学会紀要, 第18号, pp.104-109.  19世紀末イギリスの軽度精神遅滞特殊学級には学習上の遅れを示す肢体不自由児も在籍していた。そこでは精神遅滞と学習上の遅れの区別が行われたものの,実際には後者にのみ対応がなされた。肢体不自由児独自のニーズへの対応として姿勢保持用の特別なイスが用意された場合もみられたが,こうした配慮の背景に「出来高払い制」の影響が示唆された。このことは出席状況に応じた補助金支出の構造が問題となるという旨の証言を特殊学級の担任教師が行っていたことからもうかがわれた。
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真城知己(1994) 肢体不自由養護学校高等部における作業学習の位置づけに関する予備的研究 -教育課程上の設定の状況と実践例の検討-.障害児教育実践研究(兵庫教育大学障害児教育実践センター紀要), 第2巻, pp.21-34. 全国の肢体不自由養護学校高等部を対象に作業学習の位置づけに関して,教育課程上の設定の状況及び実践例について検討を行った。作業学習の設定の状況については,教育課程の類型化における領域・教科をあわせた指導の設定状況との関わりから検討し,運動障害に加えて知能障害を合併する生徒に対して精神薄弱養護学校の教育課程を運用できる特例措置にもとづいた類型の適用に限界があることが示唆された。そして運動障害と知能障害の相互関係を視点に加えた指導類型の開発の必要性を指摘した。また,実践例からもこうしたニーズの存在を指摘した。
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真城知己・名川勝(1994) 高等部のみを設置する精神薄弱養護学校における職業教育をめぐる状況の検討.職業リハビリテーション, 第7巻, pp.9-16.  高等部のみを設置して主として職業教育を行う精神薄弱養護学校を対象とし,設置学科,職業関係教科等の教育課程上の位置づけ,職場実習,及び進路についてその特徴を整理し,検討を加えた。その結果,これらの精神薄弱養護学校では,大半の学校で職業教育に関する学科ではなく普通科が設置され,系統的な現場実習行われていたことが明らかとなった。そして,ある程度の実践を積んできた学校では在籍生徒の障害の程度の変化に伴って一つの過渡期にさしかかっていることを指摘した。
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真城知己(1993) イギリスにおける特別な教育的ニーズ概念の導入背景に関する一仮説 -中等教育改革を背景にした説明の試み-.障害者の教育と福祉の研究(石部元雄教授退官記念論文集), pp.10-26.  イギリスにおいては「1981年教育法」の施行に伴って従来の障害のカテゴリーが制度的に撤廃され,それに代わって新たに特別な教育的ニーズの概念が導入された。この概念の導入に伴って特殊教育の対象者が従来の10倍ともなる見積もりが行われたことを糸口に,特別な教育的ニーズ概念の導入背景について一般の学校,特にコンプリヘンシヴ・スクールの発生とその台頭の過程で生じた問題と関連づけながら仮説提起的に要因の説明を試みた。
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真城知己(1993) アメリカ合衆国に見られる障害を持つ青年に対する移行活動の現状と課題.職業リハビリテーション, 第6巻, pp.45-52.  中等教育とその後の職業生活をはじめとした地域生活を結ぶ概念としての移行活動に注目し,顕著な活動の見られるユタ州及びオレゴン州の例を取り上げて現状と課題の検討を行った。そして継続的なサポートの必要性や,個別のニーズを把握して移行活動におけるコーディネートを専門とする職種の開発,及びそうした専門家よりなる組織を支える行政当局による活動や制度的な保障を確立する努力が必要であることを指摘した。
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真城知己・石部元雄(1990) イギリスにおける特別な教育的ニーズを持つ青年に対する継続教育について.心身障害学研究(筑波大学心身障害学系紀要), 第15巻第1号, pp.63-72.  イギリスにおける継続教育は実際の在籍者数こそ少ないものの,特別な教育的ニーズを持つ青年にとっては義務教育後の教育機会の一つとして注目されるものである。本論文では,特別な教育的ニーズを持つ青年に対して開講されている継続教育について,法的背景やその課程の種類,職員養成等の問題を明らかにするとともに,現行法である「1988年教育改革法」の施行に伴って生じることが予想される今後の課題について述べた。
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真城知己・石部元雄(1989) 戦後のイギリス特殊教育に関する一考察 -ウォーノック報告に焦点をあてて-.心身障害学研究(筑波大学心身障害学系紀要), 第14巻第1号, pp.91-98.  イギリスにおいて1978年に提出された「ウォーノック報告」に焦点をあて戦後のイギリス特殊教育における問題点を整理するとともに,様々な専門領域が関与するようになり,ますます複雑さを増す現代の特殊教育について,再度「教育」という観点から見直す必要があることを指摘した。
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